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VA/VEとは?——製造コストを設計段階で下げる実践手法

2026 02 17 コストダウン・VA/VE
VA/VEとは?——製造コストを設計段階で下げる実践手法

「もっとコストを下げてほしい」——そう言われたとき、多くの調達担当者がまず考えるのは、サプライヤーへの値下げ交渉や調達先の切り替えではないでしょうか。しかし、こうした”できあがった後”のコストダウンには限界があります。なぜなら、製造コストの70〜80%は設計段階で決まると言われているからです。

本記事では、設計段階からコストを作り込む手法「VA/VE」の基本概念と、製造業の現場で実際に効果を上げている実践事例を解説します。「コストダウンの余地がもう見つからない」と感じている調達担当者・設計者の方に、新たな改善の切り口を提供できれば幸いです。

VA/VEとは——「機能」と「コスト」の関係を見直す手法

VA/VEは、製品やサービスの「機能」を維持または向上させながら「コスト」を下げるための体系的な手法です。1947年にGE(ゼネラル・エレクトリック)のローレンス・マイルズが開発し、その後日本の製造業でも広く取り入れられてきました。

VEとVAの違い

VE(Value Engineering)とVA(Value Analysis)は、しばしば混同されますが、適用するタイミングに違いがあります。

VE(バリューエンジニアリング)VA(バリューアナリシス)
適用タイミング設計・開発段階(製品が世に出る前)既存製品の改善段階(量産開始後)
主なアプローチ設計仕様・工法・材料を根本から検討既存の設計・工程のムダを分析・改善
効果の大きさ◎ 大きい(白紙から最適化できる)○ 中程度(既存制約の中での改善)
主な推進者設計部門・生産技術部門調達部門・品質管理部門

VEは「これからつくるもの」に対して最初からコストを最適化する考え方であり、VAは「すでにあるもの」のコストを見直す考え方です。本記事では、実務上は両者を合わせて活用するケースが多いため、以降「VA/VE」と総称して解説します。

VA/VEの基本公式

VA/VEの根底にあるのは、次のシンプルな考え方です。

価値(Value)= 機能(Function)÷ コスト(Cost)

価値を高めるには、3つの方向性があります。

  1. コストを下げる(機能は維持)— 最も一般的なアプローチ
  2. 機能を上げる(コストは維持)— 付加価値型の改善
  3. コストを下げつつ、機能も上げる— 理想形だが工法転換で実現できるケースがある

重要なのは、「コストを下げる=品質を落とす」ではないということです。VA/VEは、機能に寄与していないムダなコストを見つけ出して削減する手法です。必要な機能は一切犠牲にしません。

VA/VEが効果を発揮する5つの改善アプローチ

VA/VEの考え方に基づく改善は、大きく次の5つのアプローチに分類できます。ここでは、製造業の実際の案件に基づく改善実績をもとに、それぞれの具体例を紹介します。

アプローチ①:公差・仕様の適正化

設計図面の公差指定が「必要以上に厳しい」ケースは、製造現場では非常に多く見られます。過剰な公差は加工工程を増やし、コストを押し上げる最大の要因のひとつです。

【実績例】公差を見直し、切削工程を圧造のみに集約 → 部品単価 約40%削減

ある部品では、機能上は一般公差で十分な箇所にも厳しい寸法公差が設定されていました。公差を適正化したことで、従来は切削で仕上げていた工程が不要になり、冷間圧造のみで完結。部品単価は約40%削減され、月間利益額は約45万円の増加につながりました。

VA/VEの視点では、「この公差は製品のどの機能を保証するために必要か?」を1つずつ検証します。根拠のない公差指定を見つけ出すだけで、大きなコストダウンが実現することがあります。

公差の適正化と設計改善による切削コスト削減の詳細は、切削加工のコストを下げる5つのアプローチ——工法変更だけじゃない改善策で解説しています。

アプローチ②:工法転換

同じ形状・同じ機能の部品でも、「作り方」を変えるだけで加工費の構造が根本から変わります。VA/VEにおける工法転換は、最もインパクトの大きい改善手法です。

【実績例】加工工法を焼結から圧造に変更 → 製造利益率が約3倍に改善(10%→30%)

ある部品は長年、焼結(粉末冶金)で製造されていましたが、形状と材質を分析した結果、冷間圧造(ヘッダー加工)でも同等の品質が確保できることが判明。工法を転換したところ、材料歩留まりの改善と加工速度の向上により、製造利益率が10%から30%へと大幅に改善しました。

【実績例】切削指定部品をダイカスト化 → 部品単価 約93%削減(切削比 約15分の1)

切削加工で製造していた部品をダイカストに転換し、さらにグローバル調達(インドネシア製造→タイ納入)を組み合わせることで、部品単価を約93%削減した事例もあります。

工法転換は金型投資が必要なため、一定以上のロット数が前提になりますが、ロット条件が合えば最も大きなコストダウン効果が期待できます。

工法ごとの特性やコスト比較は、冷間圧造・ダイカスト・MIM・焼結——量産部品の工法選択、正しくできていますか?もご参照ください。

アプローチ③:部品統合

「2つの部品を1つにできないか?」——これはVA/VEの代表的な発想です。部品点数を減らすことで、材料費・加工費だけでなく、組立工数・在庫管理コスト・品質リスクまで同時に削減できます。

【実績例】2部品(ピン+Eリング)を一体化切削品に変更 → 組立工程を削減、トータルコスト改善

従来、ピンとEリングの2部品で構成していた箇所を、一体化した切削品に変更。部品点数が2→1に減少し、客先の組立工程(カシメ作業)が不要に。部品単価だけでなく、組立にかかる人件費・工数を含めたトータルコストで改善を実現しました。

部品統合を検討する際のポイントは、「部品単価」だけでなく「組立・検査・在庫管理を含めたトータルコスト」で判断することです。

アプローチ④:素材変更

機能要件を満たす範囲で、より加工しやすい素材、より安価な素材に変更することもVA/VEの有効な手法です。

具体的には、以下のような変更が検討対象になります。

変更内容期待される効果
一般鋼(S45C等)→ 快削鋼(SUM24L等)切削速度の向上による加工時間短縮
高グレードステンレス → 適正グレードへの変更材料費の削減、被削性の改善
特殊板厚 → 標準流通材材料調達リードタイム短縮、ロスの削減
金属 → エンプラ(樹脂)への置換軽量化と加工費削減の両立

素材変更は、強度・耐食性・耐熱性などの機能要件に直結するため、設計部門との緊密な連携が不可欠です。「機能を満たす最も経済的な素材は何か?」という問いがVA/VEの出発点になります。

アプローチ⑤:調達スキームの最適化

VA/VEの範囲は設計や製造に限りません。部品の調達方法、物流、梱包に至るまで、コストに影響するすべての要素が分析対象です。

【実績例】規格品(ねじ類)の調達先を最適化 → 年間調達コスト 約100万円削減

量産で使用するねじ類の調達先を見直し、より競争力のある供給元に切り替えたことで、年間約100万円のコスト削減を達成。部品そのものは変わらなくても、「どこから買うか」を見直すだけで大きな改善が得られる好例です。

【実績例】梱包資材の変更と納入スキームの見直し → 月間作業時間 約12.5時間削減

梱包資材を変更するとともに、仕入先からの納入スキーム(荷姿・納入頻度・受入方法)を見直した結果、月間で約12.5時間の作業時間を削減。資材コストも同時に下がりました。

調達先の比較見積もりの進め方は、金属加工の見積もり、1社だけで決めていませんか?——比較見積もりの正しいやり方で詳しく解説しています。

VA/VEを自社で進める3つのステップ

VA/VEの考え方を理解したところで、実際にどう進めればよいのか。現場で実践するための3つのステップを紹介します。

ステップ1:コスト構造を分解し、改善対象を特定する

まず、対象部品のコストを「材料費・加工費・表面処理費・検査費・物流費・組立費」といった要素に分解します。どの費目にどれだけのコストがかかっているかを見える化したうえで、比率が大きい項目から優先的に改善を検討します。

購入金額の大きい品目を洗い出すABC分析(金額の大きい順にA・B・Cランクに分類)も、対象選定の定番手法です。

ステップ2:「機能」と「コスト」を対応付けて分析する

次に、部品の各仕様(公差・材質・表面処理・形状)が「どの機能を実現するために必要か」を1つずつ検証します。ここで重要なのは、機能に寄与していない仕様(=過剰仕様)を見つけ出すことです。

たとえば、以下のような問いを立てます。

  • この公差は、相手部品との嵌合(はめ合い)に本当に必要か?
  • この表面処理は、使用環境の耐食性要件を超えていないか?
  • この形状の複雑さは、製品の機能に必要不可欠か?

過剰仕様が見つかれば、それがそのままコストダウンの機会になります。

ステップ3:改善策を立案し、効果を定量的に検証する

過剰仕様や改善余地が見つかったら、具体的な改善策を立案します。改善策は「設計変更」「工法転換」「素材変更」「調達先変更」など複数の軸で検討し、期待されるコスト削減効果と実現難易度の2軸で優先順位をつけます。

分類改善策の例実現難易度
効果大 × 難易度低公差の適正化、調達先の見直しすぐに着手可能
効果大 × 難易度高工法転換(金型投資が必要)、形状変更中長期で計画的に
効果小 × 難易度低梱包仕様の変更、素材のグレード変更余力があれば実施

重要なのは、改善策の効果を「感覚」ではなく「数字」で検証することです。部品単価の変化、年間削減額、品質への影響を定量的に記録し、効果が確認できた施策は類似部品にも横展開します。

3つの軸(設計・工法・調達)を組み合わせたコストダウンの全体像は、量産部品のコストダウン方法まとめ——設計・工法・調達の3軸で考えるで体系的に整理しています。

なぜ「設計段階から製造パートナーを巻き込む」と効果が大きいのか

VA/VEで最大の成果を出している企業に共通するのは、設計の初期段階から製造側の知見を取り入れていることです。

設計部門だけでVA/VEを進めようとすると、工法の選択肢や加工現場の制約に関する知識が不足しがちです。「この形状は圧造で作れる」「この公差なら鍛造で十分」といった判断は、実際に製造を手がけるパートナーの知見がなければ正確にはできません。

逆に、調達部門だけでVA/VEを進めると、「値下げ交渉」に偏りがちです。価格交渉だけでは限界があり、サプライヤーとの関係も悪化しかねません。

理想は、設計・調達・製造の3者が連携してVA/VEに取り組むこと。とくに、複数の工法に精通し、設計改善の提案力を持つ製造パートナーが加わることで、「公差を緩和すれば工法転換できる」「素材を変えれば海外で安く作れる」といった軸を横断した最適解が見えてきます。

まとめ

VA/VEは、「できあがった後の値下げ交渉」ではなく、「設計段階からコストを作り込む」ための実践手法です。

  • VEは設計・開発段階で最適化を行い、VAは既存製品の改善を行う
  • 改善アプローチは、公差適正化・工法転換・部品統合・素材変更・調達最適化の5つ
  • 「機能に寄与していないコスト」を見つけ出すことが、VA/VEの本質
  • 設計・調達・製造の3者連携で取り組むことで、最大の効果が得られる

VA/VEに「遅すぎる」ことはありません。量産中の部品でも、図面と実績データを見直すことで改善余地が見つかるケースは数多くあります。まずは自社の主力部品から、VA/VEの視点で見直してみてはいかがでしょうか。

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